2016年5月7日土曜日

ITの役割

ITに関する記事です。
我々(提供者側)は、ITの利用活用する点において、お客様を変えてゆく努力が必要になります。しかし、「ITは道具に過ぎない」とITの役割を自ら貶めているようでは、お客様にITの価値を伝えることはできません。そのことを問い直す必要があります。
では、ITとはどのような役割を担っているのでしょうか。改めて整理してみましょう。


➀ビジネスの変革や新たなビジネスの創出を促す「思想としてのIT」
  ITの進化はこれまでの常識を崩壊させてしまいました。例えば、

・高額な機器を購入し専門的なスキルを持つエンジニアいなければ扱えなかったコンピューター
 は、クラウドの登場で月額数百円や数千円から簡単に使えるようになりました。

・機器の動作や状態を把握するには数万円から数十万円はする高価で大きなセンサーを取り付 
 け、大きなコンピューターを横に置き、月額数十万円もする自社専用の通信回線でつながなくて
 はなりませんでした。いまでは、数円から数百円のセンサーをワイシャツのボタンサイズのコン
 ピューターにつなぎ、月額数百円の携帯電話の回線を使って世界中につながるインターネットを
 介して、様々なモノの動作や状態を把握できるようになりました。

・専門家の経験やノウハウは人工知能に置き換えられ、誰もがインターネットを介して、ほとんど無
 料に近い金額で利用できるようになりました。専門家以上の精度で未来を予測し正確な判断を下
 してくれる分野も増えつつあります。


ITが既存の常識を破壊し、新しい常識や価値観を生みだしています。言い換えれば、ITはものごと
を考えるとき、これまでとは違う新しい解釈を与える思想という役割を担っているのです。
そんな「思想としてのIT」は、ビジネスの変革や新たなビジネスを創出する原動力となります。「思
想としてのIT」と付き合うには、ITのトレンドを探り、その価値や世の中に与える影響を知ろうとする
ことが大切です。


②ビジネスの効率化や品質を高める「仕組みとしてのIT」
ITが仕事の流れを円滑にし、効率を高めてくれます。例えば、

・業務の手順を知らなくても、注文データを入力すれば手続きは自動的に進んでゆき、関係する人
 に通知され、倉庫から荷物が出荷されます。請求書も自動で発行されます。

・コールセンターでお客様からの問い合わせをうければ、かかってきた電話番号からそのお客様の
 名前や過去のお問い合わせ、購買履歴が表示されます。電話に応対する人はその情報を見な
 がらお客様に迅速で適切な応対ができます。

・誰がどのように手続きをしているかを知らなくても、交通費や経費をパソコンの画面に表示された
 書式に従って入力してゆけば、承認手続きから銀行口座への振込まで自動で処理されます。

ITはそんな「仕組み」を実現しています。
「仕組み」とは、業務の手順を作業単位、すなわち「プロセス」という要素に分解し、時間軸に沿って
 並べたものです。無駄なプロセスを省き、効率の良いプロセスの順序を決め、誰もが使えるよう
 に標準化します。それをコンピューター・プログラムに置き換えることで、誰もが間違えることなく、
 効率よく仕事を進められるようにしたのが「仕組みとしてのIT」です。経理や人事、受注、調達、生
産、販売など、様々な業務プロセスがプログラムに置き換えられてきました。一旦、プログラムに置
き換えられた「仕組みとしてのIT」は、人間のように融通を利かせることはできません。それを逆に
利用して、「仕組みとしてのIT」を使わせることで標準化された業務プロセスを業務の現場に徹底さ
せ、コストの削減や品質の安定、作業時間の短縮を実現しています。
一方、そんなITが停まってしまえば、仕事ができなくなってしまいます。時には経営や収益、社会に
大きな影響を与えかねません。例えば、航空会社の座席予約・管理システムが停まれば飛行機を
とばすことができず社会問題になります。月末に銀行の決済システムが停止すれば、入金をうけら
れない企業が社員に給与を払えなくなるかもしれません。
もし、仕事の効率を高めたい、ミスを無くして仕事の品質を高めたいのであれば、その業務プロセ
スを改善すると同時に、それを動かしているITも手直しが必要になります。
このように「仕組みとしてのIT」は業務の「仕組み」を実現し、ビジネスの効率や品質を高める役割
を果たしています。
そんな「仕組みとしてのIT」と付き合うには、経営や業務の現場の人たちが、ITの常識や価値、可
能性や限界を正しく理解し、ITの専門家と議論しながら、最適な仕組みを作り上げてゆくことが大
切です。


➂利便性の向上とビジネスの多様性を支える「道具としてのIT」
ITは仕事や生活を便利にしてくれる道具として使われています。例えば、

・スマートフォンやタブレットを使えば、どこからでも連絡がとれます。また、地図や乗り換え案内の
 アプリを使えば、無駄なくスムーズに目的地に移動できます。

・表計算ソフトやワープロ、電子メールなどのオフィース・ソフトは、仕事の効率や質を高めてくれま
 す。

・帳票や表示画面のレイアウトを画面に描いてゆくと自動的にプログラムを書いてくれる開発支援
 ツールを使えば、プログラミングを知らない業務担当者が、情報システムを開発することができま
 す。

そんな「道具としてのIT」は、ITの専門家に任せることのできるITです。もちろん、ビジネスの現場
でどのように使われるか、あるいは使い勝手や機能などは、それを利用する業務の現場の人たちの評価に耳を傾けなければなりません。しかし、先々の技術動向や他の製品やサービスと比較したコストパフォーマンスなど、専門家でなければ判断できないことも少なくありません。「道具としてのIT」と付き合うには、テクノロジーやトレンドに精通したITの専門家主導ですすめてゆくといいでしょう。


④収益を拡大させビジネスの成長を支える「商品としてのIT」
ITはそれ自身が商品となって、お金を稼いでくれます。例えば、

・スマートフォンやパソコンから楽しめるオンライン・ゲームは、ネットの世界で武器やアイテムを販
 売し、より難しいシナリオへの挑戦を有償で提供しています。

・オンライン・ショッピング・サイトは、商品の品揃えばかりでなく、利用者のこれまでの購買履歴や
 趣味嗜好を分析し、最適な商品を推奨し、売上を拡大させています。

・銀行の預貯金や決済、融資といった業務は、実際の現金の移動ではなく、台帳データを書き換え
 ることでおこなわれています。そのデータを書き換える毎に手数料が発生し、銀行に収益をもたら
 します。

このようにITを駆使して作った情報システムが商品となってお金を稼ぎ、ビジネスの成長を支えています。そのため、その出来の善し悪しが収益を大きく左右することになります。
そんな「商品としてのIT」はその商品の事業を担う人たちが責任を持って設計、構築、運用をしなくてはなりません。マーケティングや営業も深く関わってくるでしょう。当然、ITにできること、できないこと、そしてITがもたらす価値や可能性を深く理解しておく必要があります。設計、構築、運用の実務はITの専門家に任せることはできますが、その成果については事業を担う人たちが責任を担わなくてはなりません。


「商品としてのIT」と付き合うには、ITについて深く精通し、ITの専門家とどのような商品を作るかを、技術的なことに踏み込んで議論ができなくてはなりません。


「ITは道具である」という考えが何も間違えであるとは思いません。しかし、そう言い切ってしまい、その役割を狭く捉えることで自らの役割も矮小化させてしまっては、新たなビジネスの発想も狭まってしまいます。


ITの役割を大きく捉え、自らの役割を問い直すと共に、お客様にもそのことを伝えてゆくことでお客様も変えてゆく、そのように取り組んでいきたいと考えております。


                                                 Kumagai




4月下旬 市内中津川かわら


ごちそうさまでした。