2016年2月25日木曜日

ITソリューション塾より・・・

ITは鉛筆、消しゴムと同じで道具に過ぎない。それをどう使いこなすが大切だ。」
こういう説明を聞くことがあります。しかし、この表現はすこし乱暴ではないかと思っています。そこでITを「企業価値を高めるためのIT」と「顧客価値を高めるためのIT」に分けて考えてみてはどうでしょうか。ITとはどういうものか、その役割がよく分かるはずです。
企業価値を高めるためのIT
コスト削減、期間短縮、競争力強化など、ITは企業価値を高めるために使われます。企業価値を高めるためには、利便性を追求し、効率を高めなくてはなりません。また、事業のあり方を変革することも必要です。それらを実現するために「道具としてのIT」、「仕組みとしてのIT」、「思想としてのIT」の3つが使われています。
道具としてのIT
スマートフォンやパソコン、サーバーなどのハードウェア、ワープロやスプレッドシート、電子メールなどのソフトウエアは、鉛筆や消しゴム、手帳などの道具を置き換えるものです。これらを使うことで、仕事の効率や品質を高めることができます。これらを「道具としてのIT」と呼びます。
効率よく確実に日常業務を行うために必要な手段、すなわち戦術を支えるITということもできるでしょう。コストや使いか勝手の良さ、さらには多くの人が広く使っていることで、お互いにやり取りが容易になるなどの利便性が大切になります。
 「道具としてのIT」の選択は、そのことに精通した専門家に任せることも可能です。使う人たちの意見を聞きつつも、ITの専門家が様々な選択肢を比較検討し、自社に最適な道具を選択してもらうことが賢明です。
仕組みとしてのIT
生産や販売といった業務には、企業としての独自のノウハウが詰まっています。そのノウハウこそが、企業の競争力の源泉です。この大切な業務を効率よく、そして滞りなく行えるようにITは使われ、生産管理システムや販売管理システムが作られています。そこには業務の手順や手続きが組み込まれています。ですから、必要なデータを入力すれば業務が進んでゆきます。
もしそんなシステムが障害を起こして使えなくなってしまったら業務ができなくなってしまいます。また、業務改善のために仕事のやり方を変えようということになれば、情報システムにも手を加えなくてはなりません。このように業務の仕組みと不可分なITを「仕組みとしてのIT」と呼びます。作戦を支えるITと言うこともできます。「事業目標を達成する」、「業務効率を3割向上させる」、「営業利益を5%から10%に改善する」などの目標を達成するための取り組みを支えるITです。また、「他社とは比べものにならないビジネス・スピードで競争優位を確立する」、「価格破壊で市場を席巻する」、「これまで誰もやらなかったことで新たな市場を切り開く」といった事業施策も戦術です。 
戦術は、商品やサービスの内容も重要ですが、業務の手順や情報の流れが戦術に最適化されていなくてはなりません。ですから、「仕組みとしてのIT」は、業務とITの専門家たちが協力しながら共に作り上げてゆく必要があるのです。
思想としてのIT
ビッグデータやIoT、人工知能など、テクノロジーの進化は留まることを知りません。少し前までは「そんなことは無理」だったものが当たり前に使えるようになりました。このような常識の転換、すなわちパラダイム・シフトがいま急速に進んでいます。
かつての常識は非常識となり、あらたな常識に置き換えられています。そんなITの新しい常識からビジネスのあり方を見直してみると、まったく違う仕事の進め方やビジネス・モデルが見えてきます。
リモートワークやモバイルワークなど、ワークスタイルの変革を進めるにもITは欠かせません。また、ソーシャルメディアやWebメディアを活かして、これまでリーチできなかった新たな顧客を創造するためにもITが必要です。
このように、新しい常識を可能にするITを「思想としてのIT」と呼んでみてはどうでしょう。戦略を描くためのITと言うことができるかもしれません。戦略とは、「目指すべきゴールを定めそれを達成するために描く物語やシナリオです。先に紹介した、作戦はこの戦略を実現するためのひとつひとつのプロジェクトであり、戦術はそのプロジェクトを遂行するための手段や道具という関係です。
ITがもたらす新しい常識は、ビジネス・モデルやワークスタイル、顧客創造のありかたを大きく変えてしまうでしょう。「目指すべきゴール」が変わってしまいます。その新たなゴールへ至るシナリオを作り直すことで、これまでには思いも寄らなかった新しい企業価値を生み出せるかもしれません。
顧客価値を高めるIT
「企業価値を高めるIT」は、自分たちの企業や組織のためのITです。これに対して、「顧客価値を高めるIT」は収益を拡大するためのITです。「商品としてのIT」と言い換えることができます。
例えば、オンライン・ゲームやオンライン・ショッピングの仕組みは、そこで使われる情報システム自身が商品となっています。また、証券会社のトレーディング・システムや銀行の預貯金、為替などの勘定系システム、通信事業者のネットワークやそれを運用管理するシステムは、それらが売上を稼いでくれるわけですから商品そのものと言えるでしょう。
他社との差別化や競争優位の維持は、マーケティングや研究開発の成果です。その成果を情報システムとして実現しなくてはなりません。単なる手段ではなく、収益を生みだす商品そのものなのです。
事業の収益に責任を負う人たち、商品開発に関わる人たち、マーケティングに関わる人たちが、ITの専門家たちと一体となって取り組むべきITなのです。
「企業価値を高めるIT」も「顧客価値を高めるIT」も重なる部分は少なくありません。また、立場によっても違ってくるでしょう。例えば、クラウド・サービスは、それを利用する側にとっては「道具としてのIT」となりますが、サービスを提供する側としそては「商品としてのIT」となります。
このように考えてみると、ITの専門家に任せられるのは「道具としてのIT」だけです。それ以外のITはどれも経営や事業の仕組みと不可分です。「ITのことは分からないからITの専門家に任せればいい」という言い訳は許されないことがおわかりいただけるはずです。

ITソリューション塾(2/24)より

                               Ken Kumagai




















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